精神保健福祉センター運営要領について
障発1127第8号
令和5年11月27日
各 都道府県知事 指定都市市長 殿
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長
「精神保健福祉センター運営要領」について
令和4年12月に成立した「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」を踏まえ、精神保健センター運営要領を別紙のように定め、令和6年4月1日より適用することとしたので、管内市町村を含め関係者及び関係団体に対する周知方につき配慮願いたい。
なお、本通知の適用に伴い、「精神保健センター運営要領について」(平成8年1月19日健医発第57号保健医療局長通知)は、令和6年3月31日付けで廃止する。
別紙
精神保健福祉センター運営要領
1 地域精神保健福祉におけるセンターの役割
精神保健福祉センター(以下「センター」という。)は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「法」という。)第6条の規定に基づき、都道府県等及び指定都市(以下「都道府県等」という。)が設置する精神保健及び精神障害者の福祉に関する総合的技術センターとして、地域の精神保健福祉における活動推進の中核的な機能を備えなければならない。
また、住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進、地域生活支援の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のための援助等を行うものである。
さらに、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第104号。以下「令和4年改正法」という。)により、法第46条において、都道府県及び市町村が実施する精神保健福祉に関する相談支援について、精神障害者のみならず精神保健に課題を抱える者も対象とされ、これらの者の心身の状態に応じた適切な支援の包括的な確保を旨として、行わなければならないことが規定された。精神障害者等をより身近な地域できめ細かく支援していくためには、市町村が相談支援等の取組をこれまで以上に積極的に担っていくことが求められており、センターは市町村及び市町村を支援する保健所と協働し、精神障害者等のニーズや地域の課題を把握した上で、障害保健福祉圏域等の単位で精神保健医療福祉に関する重層的な連携による支援体制の構築に向け、本要領に示す各業務を総合的に推進する。
2 実施体制
(1) 組織体制
組織は、原則として総務部門、地域精神保健福祉部門、教育研修部門、調査研究部門、精神保健福祉相談部門、精神医療審査会事務部門、精神障害者保健福祉手帳判定部門及び自立支援医療(精神通院医療)判定部門等をもって構成すること。
(2) 職員の配置
ア 基本的考え方
令和4年改正法により、法第46条において、都道府県及び市町村が実施する精神保健に関する相談支援について、精神障害者のほか精神保健に課題を抱える者も対象にできるようにするとともに、これらの者の心身の状態に応じた適切な支援の包括的な確保を旨とすることが明確化され、それに伴い、センターの保健所及び市町村への支援強化の必要性が増している。
そのため、センターの職員に関して、専門職の十分な確保や人材育成及び資質向上の観点に留意し、精神保健及び精神障害者の福祉に関する総合的技術センターとしての機能や市町村の相談支援体制構築のための援助遂行を果たすために十分な人数を配置すること。なお、十分な人数を配置した上で、業務に支障が生じない場合は、職務の共通するものについて他の相談機関等と兼務することも差し支えない。
イ 所長
センターの所長は、市町村の専門的なニーズに対応していくために、精神保健指定医等、精神保健福祉に関する職務を行うのに必要な知識及び技能を十分に有する医師をあてることが望ましい。
ウ 職員構成
センターの職員構成は、医師、保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、公認心理師、精神保健福祉相談員、その他のセンター業務実施に必要な職員等多職種で構成すること。
医師については、精神科の診療に十分な経験を有する者をあてること。
医師以外の職員についても、センターが都道府県等の本庁等の精神保健及び精神障害者の福祉に関する専門性を発揮できるよう、個々のキャリアパスや精神保健福祉に関する業務の経験等も十分考慮した上で配置すること。
3 業務
以下に示す業務は、いずれもセンターの業務と密接な関係にあり、センターが精神保健及び精神障害者の福祉に関する総合的技術センターとしての立場で実施するものである。これらの業務については、都道府県等の本庁、保健所、市町村等必要な関係機関と日頃から連携し、精神障害者やその家族等の意見も考慮しながら進めていくものである。
(1)企画立案
地域における精神保健医療福祉の包括的支援を推進するため、精神保健に関する地域課題の整理及び対応策の検討、精神障害者の地域生活支援の推進方策や、医療計画、健康増進計画、アルコール健康障害対策推進計画、再犯防止推進計画、ギャンブル等依存症対策推進基本計画、障害者基本計画、障害福祉計画、自殺対策計画等の地域における精神保健福祉施策の計画的推進に関する事項等について、専門的な立場から、都道府県等の本庁と協働し、企画立案を行い、市町村や保健所をはじめとした関係機関に対しては意見を述べる等を行うこと。
(2)技術支援
令和4年改正法による法第46条の規定新設の趣旨を踏まえ、市町村や市町村を支援する保健所への支援体制の強化が必要である。
センターは、包括的支援体制の確保のために、都道府県等の本庁、保健所、市町村、児童相談所、障害者就業・生活支援センター等関係機関に対し、本項の各業務に関して、地域の事情に応じた方法で協議の場への参画、研修、事例検討、個別スーパービジョン、同席での相談や同行訪問に加えて、意見提案、情報提供、対象機関の事業実施への支援、講師派遣等により、専門的立場から積極的な技術支援を行うこと。
(3)人材育成
保健所、市町村、福祉事務所、児童相談所、障害福祉サービス事業所、その他の関係機関等で精神保健福祉業務に従事する職員に対して、都道府県等全体の施策に関することや、事例検討等を含む精神保健福祉の相談支援に係る専門的研修等を行い、人材の育成及び技術的水準の向上を図ること。
精神保健福祉相談員について、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令第十二条第三号に規定する講習会の指定基準等について」(令和5年11月27日付障害保健福祉部長通知障発1127第10号)に基づく講習会を開催する場合は保健所及び管内市町村の参加を積極的に促すこと。
(4)普及啓発
住民に対し、メンタルヘルス、精神疾患及び精神障害についての正しい知識、相談支援等の社会資源及び精神障害者の権利擁護等に関しての普及啓発を行うこと。普及啓発の実施の際には、精神障害者に対する差別や偏見をなくすため、「心のサポーター」の養成を行う等、態度や行動の変容につながることを意識すること。
また、保健所及び市町村が行う普及啓発活動に対して専門的立場から協力及び援助を行うこと。
(5)調査研究
地域の精神保健福祉における活動推進並びに精神障害者の地域生活支援の促進及び自立と社会経済活動への参加の促進等についての調査研究を行うとともに、センターは市町村の規模や資源によって住民への支援に差が生じないよう、精神保健及び精神障害者の福祉等に関する統計やデータベース等を活用及び分析し、企画立案に役立てること。また、その結果をもとに都道府県等の本庁、保健所、市町村等が行う精神保健福祉活動が効果的に展開できるよう資料を提供すること。
これらの調査研究等を通じ、精神保健福祉上の課題を抱える者のニーズや地域課題を把握した上で、障害保健福祉圏域等の単位で精神保健医療福祉に関する重層的な連携による支援体制を構築していくこと。
(6)精神保健福祉に関する相談支援
心の健康に関する相談や精神医療の新規受診や受診継続に関する相談、思春期・青年期・高齢期等のライフステージごとのメンタルヘルス及び精神疾患の課題、それらを背景とした自殺に関連する相談、家庭内暴力やひきこもりの相談、アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症等精神保健福祉に関する相談支援のうち、専門性が高く、複雑又は困難なケースに対して、総合的技術センターとしての立場から適切な相談支援等を行うとともに、保健所、市町村及び関係機関等と連携し、相談支援を行うこと。
相談支援の実施方法は、電話、メール、面接、訪問等により行うものとし、相談者のニーズや状態に応じて、ピアサポーター等の活用も含め、適切に実施すること。
特に、自ら相談窓口で精神保健の相談をすることに心理的なハードルを感じる者や地域に潜在化している精神保健に関する課題を抱える者に対しては、地域の実情に応じた体制で多職種によるアウトリーチ支援を適切に実施すること。
なお、聴覚障害等のコミュニケーションを図ることに支障がある者からの精神保健に関する相談支援に対応する場合に適切に意思疎通を図ることができるよう、手話通訳者の配置等合理的な配慮をすること。
(7)当事者団体等の育成及び支援
当事者団体や家族会等について、都道府県等単位での活動を把握し、支援することに努めるとともに、保健所、市町村並びに地区単位での活動に協力する。さらに、都道府県内の保健所、市町村等に対して、当事者、ピアサポーター等の活用を促進すること。
(8)精神医療審査会の審査に関する事務
精神医療審査会は、精神障害者の人権に配慮しつつその適正な医療及び保護を確保するために、精神科病院に入院している精神障害者の処遇等について専門的かつ独立的な機関として審査を行うために設置された機関である。センターに配置されている精神保健福祉の専門職員を活用し、精神医療審査会の開催事務及び審査遂行上必要な調査その他当該審査会の審査に関する事務を行うこと。また、法第38条の4の規定による退院等の請求等の受付についても、精神保健福祉センターで行う等、審査の客観性、独立性を確保できる体制を整えること。
なお、退院等の請求方法は書面を原則としているが、当該患者が口頭(電話を含む。)による請求の受理を求めるときはそれを認めるものとしていることに留意すること。また、退院等の請求や相談に応じた際に、請求には至らないが、第三者による支援が必要と考えられる者に対し、法第35条の2の規定による入院者訪問支援事業を都道府県等が実施している場合においては、本事業を紹介すること。
さらに、精神医療審査会の事務を行う上で、法律に関し学識を有する者からの助言を得られる体制を整えることが望ましい。
(9)精神障害保健福祉手帳の判定及び自立支援医療費(精神通院医療)の支給認定
法第45条第1項の規定に基づき申請された精神障害者保健福祉手帳の交付の可否及び障害等級の判定業務及び障害者総合支援法第52条第1項の規定による自立支援医療(精神通院医療)の支給認定を専門的な機関として行うこと。
(10)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に係る業務
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年法律第110号)による地域社会における処遇については、保護観察所長が定める処遇の実施計画に基づき、地域精神保健福祉業務の一環として実施されるものであり、センターにおいても保護観察所等関係機関相互の連携により必要な対応を行うこと。
(11)災害等における精神保健上の課題に関する相談支援
災害・事故・事件等に関連して生じた、住民の精神保健上の課題に対する相談支援について、医療機関、保健所、市町村等の関係機関と連携し、中核的役割を担うこと。
(12)診療や障害者福祉サービス等に関する機能
地域における診療、デイケア及び障害福祉サービス等の機能を確認し、必要に応じ、地域で提供されていない機能を提供すること。ただし、精神医療審査会事務並びに精神障害者保健福祉手帳の判定及び自立支援医療費(精神通院医療)の支給認定を行うことから、その判定等が公正に行われるよう、透明性及び公平性の確保に配慮すること。
(13)その他
本運営要領に定めるもののほか、地域の実情に応じ、必要な業務を行うこと。